福山大生命工学部の久冨泰資教授(微生物学)が論文にまとめた。日本菌学会が発行する英文誌に掲載された。2025年に同市で開かれる世界バラ会議福山大会も追い風にし、成果を世界に広げたいと意気込む。

バラ酵母の研究は、久冨教授の研究室と市、特産品開発のぬまくま夢工房(同市御船町)が13年に始めた。久冨教授は、市園芸センター(同市金江町)などで育ったバラ50種から1305株の酵母を分離。発酵力の高い8株を選び出した。すでに3種類の株が、パンやワイン、ビールの醸造などに使われている。

論文では、8株のうち4株の酵母についてDNAや発酵過程の詳細な分析データを載せた。特に「ミスターリンカーン」から取れた酵母はパン、ワインをつくる能力が高く、特徴的な香りがあることなどを説明している。

久冨教授によると、これまでにも花から酵母を採取する研究はあったが、成功した事例は多くない。バラは香りが強いため酵母を運ぶ虫が付きやすく、さらに開花期間が長いため酵母が増殖し、分離しやすかったとみられる。バラから取れる酵母について、実用性を詳しく調べた論文は世界初という。

現在も引き続き、より食品製造に向いた酵母の育成や、生態の解明などを進めている。久冨教授は「学術的な基礎を固める学者の仕事がまず果たせた。世界バラ会議でも福山の新たな特色ある名産品としてアピールできるようにしたい」と話す。(吉原健太郎)