ラベンダーで眠れないのはなぜ?スピカとアングスティフォリアの違い

ラベンダーで眠れない理由を、スピカと真正ラベンダーの違いから考える記事のアイキャッチ。TINOと真正・スピカの精油瓶、ラベンダー束の水彩イラスト。

「ラベンダーが眠りに良いと聞いて買ったのに、全然眠れなかった」

こんな経験はありませんか?

実はこれ、アロマ初心者さんからいただく相談で、とても多いテーマなんです。

そして「やっぱりアロマは気休めなのかな」と思ってしまう方もいます。

でも、そこで終わらせてしまうのは、ちょっともったいない。

もしかしたら、あなたに合わなかったのは「ラベンダー」そのものではなく、選んだ種類や香りのタイプだったのかもしれません。

同じ「ラベンダー」でも、植物が違う

ラベンダーと聞くと、ひとつの植物を思い浮かべますよね。

でも、アロマでよく出会うラベンダーには、いくつかの種類があります。

代表的なのは、この3つです。

呼び名 学名の目安 香りの印象 寝る前の使い方
ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー) Lavandula angustifolia やわらかく、甘さと落ち着きがある 睡眠をサポートしたい夜の候補にしやすい
ラベンダー・スピカ(スパイクラベンダー) Lavandula spicaLavandula latifolia すっきり、シャープ、カンファー様の印象 私なら、寝る前には選ばない香りです
ラヴァンジン Lavandula x intermedia 甘さとすっきり感の中間 リフレッシュや日中の気分転換に使いやすい
ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)、スピカ、ラヴァンジンの植物と精油瓶を並べた比較イラスト。各ラベンダーの学名も併記されている。
ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)、スピカ、ラヴァンジン。名前が似ていても、植物の姿や香りの印象は少しずつ違います。

ここで大事なのは、「ラベンダーなら何でも同じ」ではない、ということ。

植物の種類、交雑、育つ環境、そして精油になったときの成分組成。
それらが重なって、香りの個性が生まれます。

私は生徒さんに、いつもこうお伝えしています。

ラベルに書かれた名前や学名を見ると、香りの背景が見えてきますよ、と。

「標高」は面白い。でも、標高だけで決まるわけではありません

ラベンダーを植物として見ると、「どんな場所で育つのか」はとても面白いポイントです。

高地の乾いた環境、強い日差し、昼夜の気温差。
そうした環境の中で、植物は自分を守り、子孫を残すためにさまざまな成分を作ります。

ただし、ここは丁寧に分けて考えたいところです。

研究では、Lavandula angustifolia の中でも、産地や標高、緯度などによって形や成分に違いが出ることが調べられています。
一方で、その研究は「ラベンダー3種の違いは標高だけで決まる」と証明したものではありません。

つまり、

「標高だけで性格が決まる」

というより、

「植物の種類や育つ環境が、香りと成分を見る手がかりになる」

と考えると、ぐっと正確です。

ここが分かると、丸暗記ではなく、植物のストーリーとして精油を見られるようになります^^

アングスティフォリアは、眠る前に選びやすいラベンダー

「眠る前にラベンダーを使いたい」と思ったとき、まず候補にしやすいのはラベンダー・アングスティフォリアです。

ラベンダー・アングスティフォリアは、真正ラベンダー、トゥルーラベンダー、ファインラベンダーなどと呼ばれることもあります。

精油の成分では、リナロールや酢酸リナリルが大切な目安になります。
この2つは、ラベンダーらしいやわらかさ、落ち着いた印象に関係する成分です。

ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)を暮らしの中でどう使うかを詳しく知りたい方は、あとでラベンダー・アングスティフォリア精油の活用法も読んでみてください。

睡眠についても、ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)精油の香りを睡眠衛生と組み合わせて調べた小規模な研究があります。
その研究では、睡眠の「量」よりも「質」の面で良い変化が見られました。

ただし、ここで言えるのは「睡眠をサポートする可能性がある」というところまで。

香りの感じ方は人によって違いますし、眠りにくさの背景もそれぞれです。
医療的な不眠を治すものとしてではなく、寝る前の環境づくりの一部として考えてくださいね。

スピカは、すっきりシャープなラベンダー

ラベンダー・スピカは、ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)とは香りの印象がかなり違います。

カンファーや1,8-シネオールを思わせる、すっきりしたシャープな香り。
「ラベンダー=甘くてやさしい」と思って香ると、あれ?と感じる方も多いかもしれません。

だから、寝る前の香りとしては、私はあまり選びません。

「この香りはダメ」ということではなく、向いている場面が違うんです。

日中に気分を切り替えたいとき。
ぼんやりした頭を少しクリアにしたいとき。
植物の力強さを感じたいとき。

そんな場面では、スピカの個性がとても分かりやすく出ます。

大切なのは、「スピカを枕元に置いたら誰でも眠れない」と決めつけないこと。
香りの感じ方は個人差があります。

でも、私なら寝る前にはアングスティフォリアを選び、スピカは日中の香りとして考えます。

スピカやラヴァンジンも含めて、成分と安全性をもう少し細かく見たい方は、ラベンダー精油4種の成分と使い方に詳しくまとめています。

ラヴァンジンは、交雑から生まれたバランスの香り

ラヴァンジンは、ラベンダー・アングスティフォリアとラベンダー・スピカの交雑から生まれた植物です。

植物の世界では、こういう出会いが本当に面白いんですよね。

花粉を運ぶ虫たちの働きや、近い場所で咲く植物同士の出会いから、新しい個性を持つ植物が生まれる。
ラヴァンジンは、そのドラマを感じさせてくれるラベンダーです。

香りは、ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)のやわらかさと、スピカのすっきり感の中間のように感じることがあります。

しかもラヴァンジンは、植物としてもたくましい。
ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)より育てやすく、精油の収量も多いことから、世界のラベンダー精油市場でもとても重要な存在です。

AromaTimeがある八王子でも、ラヴァンジンは元気に花を咲かせてくれます。

生徒さんと一緒に蒸留体験をすると、大量の花から少しの精油が生まれる瞬間に、みなさん本当に息をのむんです。

「この一滴のために、こんなに花が必要なんですね」

その一滴の重みを知ると、ラベルを見て種類を選ぶことが、面倒ではなく、ちょっと愛おしい行為に変わります。

迷ったら、まずラベルを見てみましょう

ラベンダーを選ぶときは、ボトルの表側の名前だけでなく、学名や成分表も見てみてください。

目安はこんな感じです。

眠る前のリラックスタイムには、Lavandula angustifolia

日中のリフレッシュや、シャープな香りを楽しみたいときは、Lavandula spicaLavandula latifolia)。

甘さとすっきり感のバランスを楽しみたいときは、Lavandula x intermedia

そして、同じ学名でも、産地やメーカー、ロットによって香りや成分は変わります。

ここがアロマの面白いところです。

「ラベンダーだから安眠」

ではなく、

「今の目的には、どのラベンダーが合いそうかな?」

と見られるようになると、精油選びがぐっと楽しくなりますよ^^

研究と、私たちの使い方を分けて考える

最後に、根拠の話を少しだけ。

ラベンダーについては、睡眠や不安、成分、植物の交雑など、さまざまな研究があります。

でも、研究を読むときに大事なのは、

「何を、誰に、どの方法で使った研究なのか」

を見ることです。

たとえば、ラベンダー・アングスティフォリア(真正ラベンダー)の香りを吸入した研究と、標準化されたラベンダー油の経口製剤を飲んだ研究は、同じようには扱えません。
植物の成分を調べた研究も、睡眠への効果を直接示すものではありません。

ここを分けて読むと、アロマはもっと安心して、もっと面白く学べます。

植物のストーリーを楽しみながら、研究で分かっていること、まだ分からないこと、自分の香りの感じ方を分けて見る。

それが、AromaTimeで大切にしている「根拠を持って選ぶ」アロマです。

自分に合う成分タイプをもっと楽しく知りたい方は、AromaTimeの植物ストーリー診断もチェックしてみてください。

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<この記事を書いた人> 川口三枝子(AromaTime主宰)


NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。アロマ歴28年。著書『すぐ使えるアロマの化学』はロングセラーとなり、台湾語版も発売。AromaTimeスクールチームとして、緩和ケア病棟でのアロマケアボランティアも継続しています。


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