「馴染みがない」が「知っていた」に変わる。アンジェリカ精油と身近な漢方がつながるアロマの学び

「馴染みがない」が「知っていた」に変わる。アンジェリカ精油と身近な漢方がつながる学びを、アンジェリカの花・葉・根とTINOで表したアイキャッチ。

セロリ、コリアンダー、フェンネル。

食べ物としては知っているのに、精油になると、急に馴染みがなくなる。そんな植物はありませんか?

10月16日のナードレベルアップ研究コースでは、セリ科の植物をテーマに学びました。

精油の名前や成分を知ることに加えて、その植物がどんな姿で、暮らしのどこに登場するのかを見ていく。すると、覚えていた知識と、自分の経験が少しずつつながってきます。

今回は、レッスンで交わされたお話から、その学びの様子をご紹介します。

TINO
TINO

食べ物として知っていても、精油の名前になると少し遠く感じますね。

AromaTime川口三枝子
AromaTime
川口三枝子

そうなんですよね。まずは食卓や庭で出会った植物を思い浮かべてみましょう。知っている香りから、学びの入口が見つかることがあります。

精油の前に、食卓や庭にある植物を見てみる

今回取り上げたのは、セロリ、コリアンダー、フェンネル、アニス、アンジェリカ、キャラウェイ。

精油としては、普段あまり手に取らないものもありますよね。けれど、皆さんにお話を伺ってみると、暮らしの中には、それぞれの植物との接点がありました。

カレーづくりに使うコリアンダー。ザワークラウトに入れるキャラウェイ。庭で育てているフェンネル。

こうして並べると、精油の瓶の中だけで見ていたときとは、少し印象が変わりませんか?

私もフェンネルと聞くと、インド料理のお店で見かける、食後のお口直しの小さな粒を思い浮かべます。

植物の話は、遠い土地の知識だけではないんですよね。自分が食べたことのあるもの、育てているものからも、学びの入口が見つかります。

天使の草が、知っている漢方の話につながる

では、アンジェリカはどうでしょう。こちらは、植物の歴史からも話が広がりました。

アンジェリカの植物と伝統的な暮らしでの利用を紹介した実際のレッスンスライド

実際のレッスン資料の一部です。植物の姿や、暮らしの中で親しまれてきた背景から、精油への理解を深めています。

天使の草として知られ、大天使ミカエルにまつわる伝承を持つアンジェリカ。ヨーロッパでは、ペストなどの疫病から身を守ると信じられ、珍重されてきました。これは、当時の人々がこの植物に託した期待や使い方の歴史です。キュー王立植物園の植物解説でも、その背景が紹介されています。

一方で、セイヨウトウキとも呼ばれるこの植物は、日本の漢方に使う当帰と同じセリ科・トウキ属の仲間です。ただし、同じ植物ではありません。今回のアンジェリカは Angelica archangelica、日本の生薬の当帰は Angelica acutiloba などをもとにしています。当帰の基原について

レッスンでは、当帰芍薬散などの漢方の話をすると、以前使っていたというお声もありました。受講生さんの言葉をご紹介します。

「確かに漢方薬っぽい匂いですね。言われてみたら」

受講生の声(10月16日のレッスンより)

最初は香りをどう表現するか迷っていた方も、当帰の話になると、ご自分の知っている香りと結びついていきました。

別の方からも、アンジェリカには全然馴染みがないと思っていたけれど、当帰の仲間と知って急に身近になった、というお話が出ました。

「そういえば昔よく飲んでた」

受講生の声(10月16日のレッスンより)

精油そのものを飲んだという意味ではなく、当帰を含む漢方を使っていたご経験のお話です。

TINO
TINO

当帰の仲間なら、アンジェリカも同じ植物なんですか?

AromaTime川口三枝子
AromaTime
川口三枝子

同じトウキ属の仲間ですが、別の植物なんです。学名で違いを確かめながら、知っている香りや経験とのつながりを見ていきましょう。

遠いヨーロッパの薬草の歴史と、身近な漢方のお話。植物の違いを確かめながら、そのつながりをたどっていく時間になりました。

私も以前、大和当帰を紹介するイベントに参加したことがあります。根は生薬として使われますが、葉の活用が広がり、精油やハーブウォーター、香水も作られていると伺いました。

日本では、当帰の根は食薬区分上、医薬品の原料として扱われ、葉とは扱いが異なります。今回お話ししている大和当帰の精油やハーブウォーターは葉から作られ、香水にもその葉の精油が使われています。

薬草として知っていた植物が、香りを楽しむものにもなるんですね。根と葉、使う部分にも目を向けると、同じ植物の見え方がまた広がります。

今週、植物園でトウキの写真も撮りました。札に書かれていた学名は Angelica acutiloba。レッスンで香りを確かめた西洋のアンジェリカとは別種ですが、同じトウキ属の仲間です。

植物園で今週撮影したトウキ(Angelica acutiloba)の葉。西洋のアンジェリカとは別種

今週、植物園で撮影したトウキ。写真:AromaTime 川口三枝子

植物園で精油のもとになる植物に出会った過去の記録もあります。2020年に訪れたときの様子は、「東京都薬用植物園でアロマの植物に会ってきました♪」でご紹介しています。アンジェリカをはじめ、植物の姿も見ていただけます。

個性的な香りも、ブレンドすると印象が変わる

植物の話が少し身近になったところで、今度は香りです。アンジェリカには、こんな率直な感想もありました。

「手元に買うには勇気がいる」

受講生の声(10月16日のレッスンより)

そんな第一印象だった方が、マンダリンなどと合わせたブレンドを嗅ぐと、個性的な香りが穏やかになり、「使える気がしてくる」と話してくださいました。

大天使ミカエルの話を聞くうちに、香りも受け入れやすくなってきたという感想も。植物の背景を知ることが、香りの感じ方にも重なっていくのは面白いですね。

ほかの方からも、マンダリンが入ると嗅ぎやすく感じる、柑橘系とよく合う、といった声がありました。

「いい香りでした」で終わらず、単体で嗅いだときと、ブレンドで嗅いだときの違いを、自分の言葉で話してみる。皆さんの感想を聞き合うことで、一人で嗅いでいたときには気づかなかった見方にも出会えます。

香りの感想を聞くと、同じ植物にも違う入口がある

レッスンでは、事前にお送りした香りも確かめながら進めました。

セロリの香りひとつでも、爽やかに感じる方、食べ慣れた野菜の香りを思い浮かべる方、少し癖を感じる方がいらっしゃいます。

コリアンダーも、普段葉を食べる方と、カレーのスパイスとして使う方では、思い浮かべる香りが違いました。

同じ香りでも、思い浮かべるものは少しずつ違うんですよね。皆さんの感想を、一つの答えにそろえる必要はありません。

私は、その香りをどう感じたのかを伺いながら、植物のどの部分を使っているのか、普段知っている香りとどこが重なるのかを、一緒に見ていきました。

自分で嗅いで感じたことと、植物や成分について学ぶこと。その両方を行き来できるのが、香りを確かめながら学ぶ面白さです。

庭のフェンネルに、前よりも愛着が湧く

今回、庭でフェンネルを育てている受講生さんから、レッスンを聞いて、前よりも愛着が湧いたというお話がありました。

食べ物や漢方として知っている植物の精油を学ぶことについても、こんな感想をいただきました。

「馴染みがあるから余計に頭に入りやすい」

受講生の声(10月16日のレッスンより)

大きく育った姿を眺めていた植物が、授業の中で学んでいる植物とつながったんですね。

別の方からは、ご自分でスパイスを使って料理をするお話も伺いました。コリアンダーを炒って、つぶして、香りを楽しむ。キャラウェイを料理に加えてみる。

精油について学んでいる時間に、台所や庭での経験が出てくる。そこから、植物への関心がまた広がっていきました。

成分名を覚えることも大切です。でも、その名前だけでは思い出しにくかったものが、身近な植物の姿や香りと結びつくと、学ぶ手がかりが増えていきます。

なお、料理に使う植物と、成分が濃縮された精油では、扱い方が違います。食卓とのつながりを楽しむことと、精油の使い方を判断することは、分けて考えています。

一度学んだ資料も、今の疑問から見直してみる

この日は、新しいテーマに入る前に、これまでの資料についてもお話ししました。

私は、2年間にいろいろなテーマで取り上げてきたスライドを、精油ごとに振り返れる形にまとめ直してお渡ししました。

あるときは植物の育つ環境から。別のときは、ブレンドや使う場面から。

同じ精油を違う切り口で学んでいても、資料が別々のところにあると、つながりに気づきにくいことがあります。

だから、一つの精油について、これまでどんなふうに学んできたのかを見返せるようにしたかったんです。

新しい知識を増やすだけでなく、すでに持っている知識を、今の経験や疑問とつなぎ直す。

ナードレベルアップ研究コースでは、そんな振り返りも重ねています。

以前はあまり使わなかった精油にも、植物の姿や暮らしとのつながりを知ることで、もう一度目を向けるきっかけが生まれます。

お手元にある精油を一つ選んで、その植物の姿を思い浮かべてみてください。食べたことがある、庭で見たことがある、香りに覚えがある。そんな身近な接点から、次に知りたいことが見つかるかもしれません。

資格取得後のレッスンでどんな学びをしているのかは、こちらのレベルアップ講座レポートでもご紹介しています。

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<この記事を書いた人> 川口三枝子(AromaTime主宰)


NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。アロマ歴28年。著書『すぐ使えるアロマの化学』はロングセラーとなり、台湾語版も発売。AromaTimeスクールチームとして、緩和ケア病棟でのアロマケアボランティアも継続しています。


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