手洗い・消毒で手がカサカサ!看護師のための香りを楽しむハンドケア

手洗い・消毒で手がカサカサ!看護師のための香るハンドケアを紹介するTINOの水彩植物イラスト

お気に入りのクリームと香りから始める、毎日のセルフケア

この記事は「看護×アロマ」シリーズの1本です。

▶ 看護×アロマとは? 看護師が知っておきたい基礎知識と安全な学び方

毎日がんばっている手を、ちょっといたわってみませんか?

看護師さんの手は、一日に何度も手洗いや消毒を繰り返しています。

患者さんに触れる手、処置をする手、記録を書く手。

特に冬になると、手がカサカサしたり、指先にささくれができたり。

ハンドクリームを塗っても、すぐにまた手洗い……。

そんな毎日ではありませんか?

私がおすすめしたいのは、まずお気に入りの使い心地のクリームを見つけること。

さらっとしたもの、しっとりしたもの、柔らかく伸びるもの。

毎日使うものだから、好きなテクスチャーを選びたいですよね。

そして、お気に入りの精油の香りを楽しむのも、アロマテラピーならではの魅力です。

忙しい毎日の中で、ほんの少し自分のために使う時間。

ハンドケアは、そんな小さな楽しみから始めてよいと思っています。

私が冬にしているハンドケア

実は、私自身も顔のお手入れ以上に、手のケアが気になります。

仕事柄、手を使うことが多いので、冬は特にささくれや傷ができないように気をつけています。

私がよく使うのは、ホホバオイル。

お気に入りの精油を使って、香りも楽しんでいます。

そして、ときにはちょっと贅沢にアルガンオイルを使うことも。

オイルを手になじませたあとは、綿の手袋をして、そのまま眠ります。

私にとっては、これが冬のハンドケアの習慣です。

日中はさらっとしたクリーム、夜は少ししっとりしたオイル。

同じハンドケアでも、時間や気分によって使い分けるのも楽しいものです。

毎日使うものだからこそ、好きなものを選びたい。

香りや肌ざわりを楽しみながら、自分の手をいたわる。

こういう時間も、アロマテラピーの魅力の一つだと思うんです^^

最初から特別なクリームを用意しなくても大丈夫

私は、高齢のご両親のケアについてお話しするときや、ボランティアで訪れる患者さんとお話しするときにも、ニベアのような身近な市販品をおすすめすることがあります。

「ニベア」と聞くと、あの青い缶を思い浮かべる方も多いですよね。

でも、日中ならボディミルクのような、さらっとした使い心地のものが便利です。反対に、夜は少ししっとりしたものを選ぶのもいいですね。

ホホバオイルなどをアロマ専門店で買いそろえなくても、使い慣れたクリームにお気に入りの精油をちょっとプラスする。

自分の好きな香りやテクスチャーを選んで、普段のお手入れを少し楽しくする。

そんな身近なところから始めるほうが、アロマテラピーを毎日の暮らしに取り入れやすいと思うのです。

TINO: 「アロマテラピーって、専用のオイルやクリームを買わないと始められないと思ってた!」

川口三枝子: 「そんなことはないんですよ^^ いつものお手入れに、好きな香りを少し添えるところからでも楽しめるんです。」

精油を肌に使うときは適切に薄めることが基本ですが、最初から難しく考える必要はありません。

まずは自分が心地よいと思えるものを選ぶこと。

それが、毎日の習慣につながっていくと思います。

なぜ、看護師さんの手は荒れやすいのでしょう?

ここからは、少し皮膚の仕組みのお話です。

私たちの皮膚のいちばん外側には「角層」という薄い層があります。

この角層には、水分を保ちながら、外からの刺激を受け止めるバリアとしての役割があります。

ところが、石けんによる頻繁な手洗いや、水に触れる機会が多い生活が続くと、このバリアが乱れやすくなります。

乾燥、赤み、ひび割れなどが起こるのは、そのためでもあります。

ここでちょっと意外なのは、アルコール手指消毒剤が、必ずしも石けんによる手洗いより皮膚に悪いわけではないということです。

CDC(米国疾病対策センター)によると、通常の医療場面では、アルコール手指消毒剤のほうが石けんと流水による手洗いより、皮膚への刺激や乾燥が少ない場合があります。

もちろん、手が目に見えて汚れているときなど、手洗いが必要な場面もあります。

大切なのは、感染対策を省略することではなく、手指衛生と皮膚を守るケアを両立させること。

▶ 出典:CDC|Clinical Safety: Hand Hygiene for Healthcare Workers

では、保湿などのスキンケアについて、研究ではどんなことがわかっているのでしょう?

医療従事者255人を対象にした手荒れの研究

2012年、医学雑誌『BMJ』に興味深い研究が発表されました。

デンマークの3つの病院で行われた研究で、対象は過去1年間に手湿疹を経験した医療従事者255人です。

研究では参加者を2つのグループに分けました。

  • 123人: 皮膚の検査結果や仕事・家庭での刺激への接触状況を踏まえ、スキンケア教育と個別相談を受ける
  • 132人: 通常の対応を続ける

そして、5か月後に手湿疹の状態を比較しました。

その結果、教育と個別相談を受けたグループでは、通常の対応を続けたグループよりも手湿疹の重症度が有意に低くなっていました。

皮膚の状態に関する生活の質にも、改善がみられています。

医療従事者255人の手湿疹研究。スキンケア教育と個別相談を受けた123人は重症度スコアが開始時比44%改善、対照群132人は9.3%改善。

▶ 出典:Ibler KS, et al.(2012)Skin care education and individual counselling versus treatment as usual in healthcare workers with hand eczema: randomised clinical trial. BMJ, 345:e7822

なかなか興味深い結果ですよね。

ただし、この研究は、特定のクリームや精油の効果を調べたものではありません。

対象も看護師だけではなく、さまざまな医療従事者です。また、5か月後までの評価なので、長期間の予防効果まではわかりません。

この研究から私が大切だと感じるのは、自分の皮膚の状態を知り、日常生活に合ったケアを考えることです。

何を使うかだけでなく、いつ、どのように使うのか。

そして、私はそこにもう一つ加えたいと思います。

それは「自分が好きな使い心地」であること。

毎日使うものですから、続けたくなることも大切ですよね。

ホホバオイルとアルガンオイル、何が違うの?

さて、ここからは私の好きなアロマ化学のお話です。

私が冬のハンドケアに使っているホホバオイルとアルガンオイル。

どちらも植物の種子から得られますが、実は化学的な構造がかなり違います。

TINO: 「どっちも植物のオイルなのに、そんなに違うの?」

川口三枝子: 「そうなんです。特にホホバオイルは、普通の植物油とはちょっと違うんですよ^^」

ホホバオイルは、実は「液体のワックス」

ホホバは、北米の乾燥した地域に生育する植物です。

乾燥した環境で育つホホバの種子には、特徴的な脂質が蓄えられています。

その主成分が「ワックスエステル」です。

脂肪酸と脂肪アルコールが結びついた、長い炭素鎖を持つ成分です。

実は、オリーブオイルなど一般的な植物油に多く含まれる「トリグリセリド」とは、構造が違います。

つまり、ホホバオイルは名前こそオイルですが、化学的には液体のワックスなのです。

こうした性質から、化粧品の基材としても広く利用されています。

普段何気なく使っているホホバオイルも、植物の姿や成分を知ると、ちょっと違って見えてきませんか?

▶ 出典:Gad HA, et al.(2021)Jojoba Oil: An Updated Comprehensive Review on Chemistry, Pharmaceutical Uses, and Toxicity

ホホバオイルを使ったクリーム作りに興味がある方は、こちらの過去記事もご覧ください。

▶ 【保存版】冬の乾燥対策!手作りアロマクリームの簡単3レシピ

アルガンオイルは、オレイン酸とリノール酸が特徴

一方、アルガンオイルは、主にモロッコに生育するアルガンの木の種子から得られます。

こちらはホホバオイルとは異なり、主成分がトリグリセリドです。

構成する脂肪酸のうち、特に多いのがオレイン酸とリノール酸。

また、トコフェロールなどの微量成分も含まれています。

同じ植物由来のオイルなのに、含まれる脂質の構造や成分が違うんですね。

▶ 出典:Gharby S, Charrouf Z.(2022)Argan Oil: Chemical Composition, Extraction Process, and Quality Control

では、ホホバとアルガン、どちらが手荒れによいのでしょう?

私は、どちらが優れていると単純には考えていません。

成分の違いを知ることと、実際の肌でどちらが使いやすいかは別のお話だからです。

使い心地や肌の状態、その日の気分によって選ぶ。

そんな楽しみ方もあってよいと思います。

手荒れがひどいときは、精油を使わない選択も

お気に入りの香りを使うのは、アロマテラピーの楽しみの一つです。

ただ、手荒れがひどいときには、精油を使わず、肌に合う植物油だけでケアしたほうがよい場合もあります。

というのも、例えばラベンダー精油には、リナロールや酢酸リナリルなどの芳香成分が含まれています。

リナロールは空気中の酸素によって酸化すると、接触アレルギーの原因となる物質を生じることがあります。

天然の精油だから、どんな肌にも安全というわけではありません。

▶ 出典:DermNet|Contact allergy to hydroperoxides of limonene and linalool

TINO: 「ラベンダーって、やさしい香りのイメージだけど、使わないほうがいいときもあるの?」

川口三枝子: 「そうなんです^^ 香りが好きなことと、今の肌に合うかどうかは別なんですよ。」

赤みやひび割れ、炎症があるときは、刺激の少ない保湿で皮膚を守ることを優先したいですね。植物油もしみたり合わなかったりする場合には、無理に使う必要はありません。

香りを楽しむ日もあれば、植物油だけでお手入れする日もある。

肌の状態に合わせて選べることも、アロマテラピーの大切な知識だと思います。

なお、手湿疹などで治療が必要な場合には医療的なケアが優先です。ひび割れや痛み、赤み、かゆみなどが続く場合は、皮膚科で相談してください。

▶ 関連記事:肌に塗る前に、皮膚のバリアを見る理由

日中と夜で、ハンドケアを使い分けてみましょう

ハンドケアは、一日中同じものを使わなくてもよいと思います。

日中は、さらっとした使い心地

仕事や家事の合間には、べたつきにくいボディミルクやハンドクリームが便利です。

塗ったあとにすぐ作業をするなら、使いやすさは大切ですよね。

看護師さんの場合、勤務中は施設で認められた保湿剤を選び、手指衛生のルールを守ることが基本です。

夜は、少し贅沢な時間に

夜は、昼間よりもしっとりしたものを選んでみる。

ホホバオイルやアルガンオイルなど、お気に入りの植物油を取り入れるのもよいですね。

私は冬になると、オイルをなじませたあとに綿の手袋をして眠っています。

ささくれや乾燥が気になる指先まで、やさしくお手入れする時間です。

もちろん、綿の手袋は必ず必要なものではありません。

日中はさらっと、夜はしっとり。

自分の生活に合わせた使い分けを楽しんでみてください。

また、乾燥するのは手だけではありません。

冬になるとかかとのガサガサやひび割れが気になる方には、こちらの記事もあります。

▶ かかとのひび割れ対策に、アロマクリームでしっかり保湿してツルツルに★

よくある質問

Q. ホホバオイルとアルガンオイル、どちらがおすすめですか?

どちらも植物由来ですが、脂質の構造が異なります。

ホホバオイルはワックスエステル、アルガンオイルはトリグリセリドが中心です。

まずは、ご自身の肌との相性や使い心地で選んでみてください。

Q. 手荒れしているときも精油を使えますか?

赤みやひび割れがある場合には、精油を使わずに、刺激の少ない保湿を優先しましょう。

香りを使わないことも、肌を守るための選択です。

Q. 高価な植物油を用意したほうがよいのでしょうか?

そんなことはありません。

ニベアのような身近な市販品でも、ご自身の使いやすいものを選べます。

アロマテラピーは、特別なものをたくさんそろえることよりも、毎日の暮らしに無理なく取り入れることが大切だと思っています。

手をいたわる時間も、アロマテラピーの楽しみ

看護師さんは、患者さんのことを考える時間がとても多いお仕事です。

だからこそ、ご自身の手にも、少し目を向けていただきたいと思います。

好きなクリームを選ぶ。

お気に入りの香りを楽しむ。

ときには少し贅沢な植物油を使ってみる。

そんな身近なところから、植物や香りを生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

そして、いつも使っている植物油や精油の成分を知ると、毎日のハンドケアが少し違って見えてきます。

「ホホバオイルって、実はワックスだったんだ!」

「同じ植物油でも、成分がずいぶん違うんだ」

そんな発見から、もっと植物や成分のことを知りたくなるかもしれません。

AromaTimeでは、植物の育つ環境や姿から、精油や植物油の化学成分へとつなげながら、安全な使い方を学ぶことを大切にしています。

まずは、いつもの暮らしの中でアロマを楽しむこと。

そして、もっと深く知りたくなったら、植物と成分の世界を一緒に学んでみませんか?

▶ 看護×アロマの記事一覧はこちら

▶ 看護×アロマの基礎知識と安全な学び方


この記事を書いた人|川口三枝子

AromaTime代表/NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー。著書『すぐ使えるアロマの化学』。

植物の生育環境と精油の化学成分をつなぎ、研究の根拠を踏まえたアロマテラピーを伝えています。緩和ケアでのアロマボランティア活動にも取り組んでいます。

 

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<この記事を書いた人> 川口三枝子(AromaTime主宰)


NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。アロマ歴28年。著書『すぐ使えるアロマの化学』はロングセラーとなり、台湾語版も発売。AromaTimeスクールチームとして、緩和ケア病棟でのアロマケアボランティアも継続しています。


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