手荒れの原因はアルコール消毒? 実は石けん選びも大切だった!

コロナ禍の生徒さんの体験と、医療従事者62人の研究から考える皮膚バリア
この記事は「看護×アロマ」シリーズの1本です。
コロナ禍に、手荒れで困っていた生徒さんのお話
コロナ禍には、手洗いやアルコール消毒をする機会が一気に増えましたね。
その頃、ある生徒さんから、薬用の洗浄剤を使う中で手荒れがひどくなってしまったというお話を聞きました。
その方は、ホホバオイルを配合した手作り石けんを使うようになり、洗い心地がよくなったと教えてくださいました。
また、ご自身やお子さんのアトピー、敏感肌などで洗浄剤選びに悩んでいた方からも、石けんの配合を見直して「使い心地が変わった」という感想を何人かから聞いています。
これは、あくまで個々の生徒さんの体験です。手作り石けんに皮膚疾患を治す効果がある、という意味ではありません。
でも、毎日使うものだからこそ、何で洗うかを見直すことには意味があるのでは、と感じたんです。
手荒れの原因は、アルコール消毒だけなのでしょうか?
医療従事者62人を比較した研究では?

2022年に『Contact Dermatitis』で報告された、Montero-Vilchezらのランダム化比較試験をご紹介します。
医療従事者62人を、勤務中の手指衛生方法によって3群に分け、8時間勤務の前後で皮膚バリアの状態などを測定しました。
| 手指衛生方法 | 人数 | TEWLの変化(g/m²/h) |
|---|---|---|
| 石けんと水 | 20人 | +3.87 |
| アルコール手指消毒剤 | 21人 | −1.46 |
| 消毒用シート | 21人 | +5.45 |
TEWL(経皮水分蒸散量)は、皮膚から水分が逃げる量の指標です。一般に増加は皮膚バリアへの負担を考える手がかりになります。
この研究では、アルコール手指消毒剤の群でTEWLの増加が最も小さく、3群間の差は統計的に有意でした(p=0.023)。
アルコールは乾燥するイメージがありますから、意外に感じませんか?
TINO:「アルコールがしみることもあるのに、どうして?」
川口三枝子:「しみるという感覚と、繰り返し使ったときの皮膚バリアへの影響は、同じではないんですね^^」
ただし、これは特定の製品を用いた8時間勤務の比較です。すべての石けんがアルコールより肌に悪いという結論ではありません。また、手作り石けんの優劣を調べた研究でもありません。
▶ 原著論文:Montero-Vilchez T, et al. (2022), Contact Dermatitis
何度も洗うと、皮膚のバリアはどうなる?
皮膚の一番外側にある「角層」は、水分を保ちながら、外からの刺激が入りにくい状態をつくっています。
石けんや洗浄料は汚れを落とす一方、使い方によっては角層の脂質などにも影響します。洗う回数、洗浄成分、pH、こすり方、洗ったあとの保湿も関係します。
一方、アルコール手指消毒剤には、グリセリンなどの保湿成分が配合されている製品もあります。製品全体の処方と使い方を見ずに「アルコールだから悪い」「石けんだから安心」とは言えないんですね。
手作り石けんの、私が好きなところ
私は顔も体も、ふだん同じ手作り石けんを使っています。
生徒さんたちと石けんの話になると、「もう市販の石けんには戻れない」という言葉が合言葉のように出てくるんです^^
手作り石けんでは、油脂の種類や配合を考えられることが面白いところです。
例えばホホバオイル。ホホバは、一般的な植物油に多いトリグリセリドとは異なり、ワックスエステルを主体とする素材です。少量を石けんに配合して使い心地を工夫することがあります。
また、油脂をけん化すると石けん成分とともにグリセリンが生じ、製法によっては石けんに残ります。グリセリンは保湿成分として知られています。
ただし、市販の石けんにもグリセリン配合品はありますし、完成した石けんの使用感は油脂・製法・配合全体で変わります。「手作りだから必ず低刺激」「ホホバを入れれば必ず保湿効果が高い」とは言えません。
TINO:「同じ『石けん』でも、材料とつくり方で変わるんだね!」
川口三枝子:「そうなんです。植物油の化学を知ると、毎日の暮らしに役立つところが面白いですよね。」
薬用石けんと手作り石けん、どう違う?

薬用石けんには、洗浄成分に加えて殺菌成分などが配合されている製品があります。一方、手作り石けんでは、ホホバのような素材を加えるなど、配合や使い心地を工夫できます。
ただし、薬用石けんが必ず洗浄力が強い、手作り石けんが必ず低刺激というわけではありません。どちらも製品や配合によって違うので、肌の状態と使う目的を考えて選びたいですね。
簡単!ホホバ入り手ごね石けん

ここで、私が親しんでいる簡単な手ごね石けんのレシピも紹介します。
- 石けん素材:50g
- ホホバオイル:10mL
- 精油:10~20滴(お好みで・入れなくてもよい)
- 精油を使う場合は、あらかじめホホバオイルに加えます。
- 石けん素材とホホバオイルをジッパー付き袋に入れます。
- 袋の上からもみもみして、耳たぶくらいの柔らかさになるまで混ぜます。
- 取り出して、丸や四角など好きな形にまとめます。
石けん素材の使用・乾燥・保存方法は、購入した製品の説明に従ってください。肌が弱い方やお子さん向けには、まず精油なしを基本にしてください。炎症や湿疹のある肌への使用は避け、合わなければ使用を中止しましょう。
アトピーや敏感肌のときは、何を優先する?
アトピー性皮膚炎などで肌のバリア機能が弱っているときには、洗浄剤の刺激や洗い方にも気を配る必要があります。
日本の診療ガイドラインでも、肌の状態や季節に合わせて洗浄剤を選ぶことが大切とされています。固形の石けんが液体の洗浄料より一律に優れている、という根拠はありません。
精油の香りは魅力的ですが、赤みやひび割れのある手に無理に使う必要はありません。まずは刺激の少ない洗浄と保湿を優先し、症状が続く場合は皮膚科で相談したいですね。
看護の現場では、感染対策と手肌の保護を両立
ここは大切なところです。
家庭で自分に合う石けんを選ぶことと、医療機関での手指衛生は分けて考えます。
医療現場では、施設の感染対策手順を優先してください。CDCは、目に見える汚れがない多くの医療場面ではアルコール手指消毒剤を推奨し、汚れが見える場合などには石けんと水での手洗いを求めています。
保湿剤も、勤務先で使用が認められている製品やルールを確認することが大切です。
▶ 参考:CDC:医療従事者の手指衛生と皮膚の健康
乾燥する季節こそ、毎日の洗い方を見直したい
これからの季節、手洗い後につっぱる、指先がカサカサすると感じることも増えますね。
洗浄剤の選び方、必要な場面に合った手指衛生、洗ったあとの保湿。特別なケアより、毎日続けられる小さな工夫を大切にしたいと思います。
私は、アロマを学ぶことは精油の効果だけを覚えることではないと思っています。
植物油や石けんの性質を知って、自分や家族の暮らしに役立てられる。それも、化学を学ぶ楽しさの一つです。
看護師さんの手は、患者さんに触れる大切な手。その手をいたわることも、忘れないでいたいですね。
▶ 続けて読む:手洗い・消毒で手がカサカサ! 看護師のための香りを楽しむハンドケア
よくある質問
アルコール消毒は手荒れの原因にならないのですか?
アルコール製剤でも刺激や乾燥を感じることがあります。今回の研究は、比較した製品と条件ではアルコール手指消毒剤の群のTEWL増加が最も小さかったという結果です。
手作り石けんはアトピーの人にもおすすめですか?
一概には言えません。手作り石けんも肌に合わない場合があります。刺激の少ない洗浄料と保湿を基本に、皮膚の状態に応じて選びましょう。
手洗いの後はオイルだけでもよいですか?
植物油もスキンケアの選択肢ですが、乾燥の程度によってはクリームなどの保湿剤も必要です。肌の状態や使い心地に合わせて選びましょう。
参考資料
- Montero-Vilchez T, et al. (2022). Assessment of hand hygiene strategies on skin barrier function during COVID-19 pandemic: A randomized clinical trial. Contact Dermatitis. https://doi.org/10.1111/cod.14034
- 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎のスキンケア」 https://www.dermatol.or.jp/qa/qa1/q24.html
- CDC, Clinical Safety: Hand Hygiene for Healthcare Workers. https://www.cdc.gov/clean-hands/hcp/clinical-safety/index.html
この記事を書いた人|川口三枝子
AromaTime主宰。NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。著書『すぐ使えるアロマの化学』。植物と成分の知識を、研究と暮らしの両方につなげてお伝えしています。
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<この記事を書いた人> 川口三枝子(AromaTime主宰)
NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。アロマ歴28年。著書『すぐ使えるアロマの化学』はロングセラーとなり、台湾語版も発売。AromaTimeスクールチームとして、緩和ケア病棟でのアロマケアボランティアも継続しています。
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