論文に「ローズマリー」とあっても、すぐ夜勤に勧めない理由

この記事は「看護×アロマ」シリーズの1本です。
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▶ 看護×アロマとは?看護師が知っておきたい基礎知識と安全な学び方
夜勤中の覚醒と、夜勤明けの休息を分けて考える
看護師の生徒さんから、夜勤についてお話を伺うことがあります。
夜勤明けに眠れない、眠りが浅くて疲れが取れないというご相談がある一方で、夜勤中には「眠気がつらい」「頭をはっきりさせたい」という、まったく反対のお悩みもあります。
その夜勤中の眠気について、ローズマリー精油を使った看護師対象の研究があります。
でも、論文に「ローズマリー」と書かれていたからといって、私はすぐに「夜勤にはローズマリーですね」とはお伝えしません。
なぜなら、ローズマリーには種類があり、使う時間と目的によっても、香りの選び方が変わるからです。
夜勤中の看護師80人を対象にした研究
2021年に発表された研究では、夜勤をしている看護師80人を、ローズマリー精油を使う40人と、蒸留水を使う40人に分けています。
ローズマリー群では、マスクに精油を1滴。対照群では、同じように蒸留水を1滴使い、その前後で眠気と覚醒度を質問票で調べました。
報告された平均値では、ローズマリー群の眠気スコアは12.15から8.30へ低下しました。一方、対照群では11.41から13.76へ上昇しています。
覚醒度についても、論文ではローズマリー群で改善がみられたと報告されています。
出典:The effect of rosemary essential oil inhalation on sleepiness and alertness of shift-working nurses: A randomized, controlled field trial(2021)

この結果を見ると、「やっぱりローズマリーは夜勤中によいのね」と思うかもしれません。
けれど、これは一つの研究で、質問票による前後の変化を見たものです。長く使い続けたときのことや、仕事上のミスを防げるかまで調べた研究ではありません。
アロマが休憩や睡眠の代わりになるわけでもありません。まずは、論文がどこまで調べたのかを分けて受け取ることが大切です。

TINO
研究でよい結果なら、ローズマリーをそのまま使ってもいいの?

AromaTime川口三枝子
ここからが大切なんです。「ローズマリーの何を使ったのか」まで見てから考えましょう^^
「ローズマリー」は、一つの香りではありません
ローズマリーには、ローズマリー・シネオール、ローズマリー・カンファー、ローズマリー・ベルベノンなどがあります。
同じローズマリーという名前でも、含まれる成分のバランスが違い、香りの印象も使い方も同じではありません。
今回の論文の公開情報からは、「ローズマリー精油を1滴使った」ことは確認できます。ただし、私たちが精油を選ぶときに知りたいケモタイプや、実際に使われた精油の成分分析までは、はっきり確認できませんでした。
だから、研究結果をそのまま手元のローズマリー精油へ置き換えることはできないんですよね。
ローズマリーの違いについては、「ローズマリーは、ひとつの香りではありません」でも詳しく書いています。
夜勤中と夜勤明けでは、目的が反対です
夜勤中は、仕事を続けるために覚醒を保ちたい時間です。
一方、夜勤明けは、仕事の緊張から離れて休息へ向かいたい時間です。
同じ看護師さんの一日の中でも、香りを使う目的は反対になります。
「睡眠に合う精油」「夜勤に合う精油」と、精油名だけで覚えてしまうと、この違いが抜けてしまいます。
私は、まず「いつ使うのか」「その時間に、どうなりたいのか」を伺います。そのうえで、香りの好み、体調、持病やお薬、周囲への配慮、職場で使える方法かどうかも確認します。

TINO
夜勤中に使った香りを、帰宅後も続ければいい?

AromaTime川口三枝子
帰宅後は休息へ向かう時間ですよね。目的が変われば、香りも使い方もいったん考え直します。
論文の結果から「この一本」を選ぶまで
論文を読んだあと、実際の精油を選ぶときには、少なくとも次のことを見ます。
- 研究の対象は誰だったか
- いつ、どのような方法で使ったか
- 植物名、ケモタイプ、成分は確認できるか
- その方の体調や禁忌に合っているか
- 本人が心地よいと感じる香りか
- 職場で香りを使ってよいか、周囲へ影響しないか
夜勤の現場では、ご本人だけでなく、患者さんや同僚も同じ空間にいます。マスクに香りをつける方法も、すべての職場やすべての方に適しているとは限りません。
研究結果を知ることと、現場で安全に使えることは別です。
だからこそ、論文の結論だけでなく、その間を一つずつつないで考える力が必要なのだと思います。
アロマは、休憩や睡眠の代わりになるものではありません。強い眠気が続くときは、まず休憩や睡眠の確保を優先したうえで、香りをセルフケアの一つとして考えます。
この記事のまとめ
- 看護師80人を対象にした研究では、夜勤中にローズマリー精油を1滴吸入した群で、眠気の低下と覚醒度の改善が報告されました。
- 一つの研究結果だけで、仕事上のミスを防げる、誰にでも合うとは言えません。
- 論文の公開情報では、使われた精油のケモタイプや成分分析までは確認できませんでした。
- 同じローズマリーでも種類があり、精油名だけでは選べません。
- 夜勤中の覚醒と、夜勤明けの休息は、目的を分けて考える必要があります。
よくある質問
夜勤中にはローズマリー・シネオールを使えばよいですか?
一律には言えません。今回の論文の公開情報からは、研究で使われたローズマリー精油のケモタイプまでは確認できませんでした。精油の種類だけでなく、体調、禁忌、香りの好み、職場の環境も含めて判断します。
マスクに精油を直接つけてもよいですか?
論文ではマスクを使った吸入が行われていますが、それをそのまま一般的な使用法として勧めることはできません。精油が皮膚や目に触れる可能性、香りの強さ、周囲への影響、職場の規則を確認する必要があります。
夜勤明けにもローズマリーを使えますか?
「ローズマリーだから使う」のではなく、夜勤明けに休息へ向かいたいのか、そのときの体調や香りの感じ方はどうかを見ます。夜勤中と夜勤明けでは目的が違うため、同じ選び方はしません。
看護にアロマを取り入れたい方へ
論文を読むだけでなく、植物名、成分、安全性、その方の状態までつなげて精油を選べるようになりたい看護師さんへ。
AromaTimeのNARD JAPAN認定アロマ・アドバイザー資格取得コースでは、精油の特徴と安全な使い方を基礎から体系的に学びます。
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<この記事を書いた人> 川口三枝子(AromaTime主宰)
NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。アロマ歴28年。著書『すぐ使えるアロマの化学』はロングセラーとなり、台湾語版も発売。AromaTimeスクールチームとして、緩和ケア病棟でのアロマケアボランティアも継続しています。
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