親の介護にアロマ?ブラックペッパーの香りと嚥下反射

こんにちは^^AromaTime 川口三枝子です。
親が食事中にむせたり、お茶を飲み込むのに時間がかかったり。そんな変化が気になることはありませんか?
実は、料理でおなじみのブラックペッパーの香りを使って、高齢者の「飲み込む反射」を調べた日本の研究があります。アロマはリラックスだけでなく、看護や介護の視点からも研究されているんです。
この記事は「看護×アロマ」シリーズの1本です。
東京薬科大学で出会ったブラックペッパー
東京薬科大学で撮影したブラックペッパーです。緑色の実が育ち、熟すにつれて赤くなっていく姿を見ると、いつもの黒コショウが植物の実だということを改めて感じます。

まだ緑色の果実も、房になって垂れ下がっています。

高齢者105人を対象に、嚥下反射を調べた研究
2006年、東北大学の研究グループは、脳卒中後の高齢者105人を対象に、ブラックペッパー精油の香りが嚥下反射にどう関わるのかを調べました。
参加者はブラックペッパー精油・ラベンダー精油・蒸留水の3つのグループ(各35人)に分かれ、介護者の介助で、毎食前に1分間香りの刺激を受けました。これを30日間続けています。
ブラックペッパー群では、のどへの刺激から嚥下反射が起こるまでの平均時間が、開始前17.6秒 → 初回刺激1分後6.4秒 → 30日後4.4秒と短くなりました。ラベンダーと蒸留水の群では、同じような改善は見られませんでした。

これは嚥下反射の測定結果です。実際に誤嚥性肺炎が減ったことを証明する研究ではありませんが、介護施設で暮らす高齢者に香りを用いた点が、とても興味深いですね。
この研究は、短いInstagramリールでも紹介しています。
ブラックペッパーの研究を紹介したInstagramリールを見る
なぜ、黒コショウの「香り」に注目したの?
研究者たちは、飲み込む反射と脳の働きの関係に注目していました。とくに「島皮質(とうひしつ)」は、体の感覚や食欲などにも関わる脳の領域です。
そこで、食欲を刺激する香りとしてブラックペッパーが選ばれました。研究では一部の参加者10人で、島皮質などの脳血流が増加したことも報告されています。

ここで使われたのは、辛い黒コショウを食べる方法ではなく、精油の香りを鼻で嗅ぐ方法です。辛味の代表的な成分ピペリンと、香りをつくる揮発性成分は、区別して考えます。
親の介護や訪問看護で、どう考えたらいい?
2022年に発表された海老原孝枝先生の総説でも、家庭での誤嚥予防を考える方法の一つとして、食事前のブラックペッパーの芳香刺激が紹介されています。ただし、これは家庭での使用効果を直接確かめた試験結果ではありません。
親の食事中のむせが気になるときは、まず飲み込みの状態を医師や言語聴覚士などに相談することが大切です。香りを取り入れる場合も、ご本人の好みや体調を確かめ、無理に嗅がせないようにしましょう。
香りを気軽に試すなら、こんな商品も
「まずはブラックペッパーの香りを知りたい」という方には、衣類に貼るタイプの「アロマパッチ 黒こしょうの香り」のような商品もあります。精油を瓶で用意しなくても、香りに親しめるのは手軽ですね^^
この製品には黒コショウ精油のほかメントールなども使われています。また、研究と同じ条件・同じ効果を保証するものではなく、医療用の治療具でもありません。商品表示に従い、香りを楽しむ雑貨として考えてください。
身近なアロマだからこそ、根拠から知って選びたい
いつもの黒コショウの香りが、脳や嚥下反射の研究につながっている。そんなことを知ると、身近な植物の見方も変わってきます。
「この精油は何に良い?」だけで終わらず、「どんな人に、どんな方法で使い、何が確かめられたのか」まで知ること。私がアロマの学びで大切にしていることです。
植物の姿と精油の成分、実際の研究を結びつけて学びたい方は、AromaTimeの学び方もご覧ください^^
参考文献
Ebihara T, et al. (2006). A Randomized Trial of Olfactory Stimulation Using Black Pepper Oil in Older People with Swallowing Dysfunction. Journal of the American Geriatrics Society, 54, 1401–1406. 原論文
Ebihara T. (2022). Comprehensive Approaches to Aspiration Pneumonia and Dysphagia in the Elderly on the Disease Time-Axis. Journal of Clinical Medicine, 11(18), 5323. 総説(全文)
