自然の「すごい!」は人生の意味につながる?|Aweと自然の心理学

こんにちは^^ AromaTime 川口三枝子です。
大きな木を見上げたとき、思わず「すごい!」と声が出たことはありませんか? あるいは、季節が移り変わる景色を見て、「今この時間も大切だな」と感じたことは?
私はポジティブ心理学を学ぶ中で、「自然と幸福」だけでなく、自然と人生の意味の関係にも関心を持ってきました。
今回は「身近な自然の意外な力」シリーズとして、前半は「Awe(畏敬の念)」、後半は「自然と人生の意味」をそれぞれ原著研究から解説します。別々の研究をつなげて考えますが、「木を見れば人生の意味が高まる」といった結論にはしません。
前回の記事では、疲れた日でもすぐできる!自然のチカラ3選として自然映像、机上の植物、公園で過ごす時間の研究をご紹介しました。今回は、同じ自然でもどんな気持ちで見ているかに注目です。
【前半】自然の「すごい!」――Awe(畏敬の念)の研究
Aweとは、どんな感情?
Awe(オウ/畏敬の念)は、大きさ、美しさ、意外さなどに圧倒され、今までの考え方では捉えきれないと感じるような心の動きです。KeltnerとHaidt(2003年)は「壮大さ」と「理解の枠組みを調整する必要」を特徴として論じています。
大きな木や星空はその例ですが、Aweは自然に限りません。人の素晴らしい行動、音楽や芸術でも起こり得ます。

「わあ、すごい!」にも心理学の研究があるんだね!

あるんです^^ しかも、感じ方だけでなく、その後の行動を調べた実験もあります。
① 大木を見上げた90人――人を助ける行動に違い

Piffら(2015年)は、5研究・計2,078人でAweと他者を助ける行動などを調べました。そのうちの屋外実験では大学生90人が、背の高いユーカリの木々または高い建物を、1分間見上げました。
その後、実験者がペンを落とす場面で、木を見上げた群のほうがペンを拾う援助行動が多いという違いが報告されました。研究者は、自分を広い世界の一部と感じる「small self」という感覚にも注目しています。
ただし、これは実験直後の援助行動です。木を見たら長期的に性格が変わる、という研究ではありません。
原著:Piffら(2015)Awe, the Small Self, and Prosocial Behavior
② 感動を探す「Awe散歩」――52人の解析

Sturmらの研究では、健康な高齢者60人を無作為に分け、週1回・15分間の屋外散歩を8週間続けてもらいました。解析対象は52人(Awe散歩24人、通常散歩28人)です。
Awe散歩群は、歩きながら「すごい」「美しい」と感じるものに意識を向けました。通常散歩群は、そのような特別な指示なしに歩きました。
Awe散歩群では、散歩中のAweや喜び、温かな対人感情が高く、撮影した写真から評価した笑顔にも変化が見られました。一方、介入前後の不安・抑うつ・生活満足度には明確な改善が認められませんでした。
また、散歩場所は森だけではありません。街を含む屋外で「感動に気づく」実践として理解するのが正確です。
原著:Sturmら(2022)Big Smile, Small Self(2020年オンライン公開)
【後半】自然は「人生の意味」を感じさせる?
ここからがもう一つのテーマです。自然を見て「すごい!」と感じることと、「今の自分の人生には意味がある」と感じることは、同じなのでしょうか? 答えは、同じではありません。 そこで、まず「人生の意味」を研究ではどう捉えるのかを整理します。
人生の意味には、いくつかの側面がある
人生の意味は、「大きな目標を持つこと」だけではありません。心理学では、次のような側面が研究されています。
- 一貫性(coherence):自分の経験や人生を理解できると感じること
- 目的(purpose):自分が向かいたい方向や目標があること
- 存在の大切さ(mattering):自分の存在には価値があると感じること
- 体験を味わうこと(experiential appreciation):今この瞬間の経験を価値あるものとして受け取ること
最後の「体験を味わうこと」は、比較的新しく注目されている側面です。「何か大きなことを成し遂げなければ人生に意味がない」という話ではないんですね。
③ 2026年・5研究1,864人――自然と人生の意味

Needyら(2026年)は5研究・計1,864人で、「自然とのつながり・自然に触れること」と「人生の意味」の関係を調べました。研究は、質問紙調査3つ、庭園と駐車場での調査を比べる準実験1つ、自然映像と人工的な環境の映像を使う実験1つからなります。
質問紙調査では、自然とのつながりが強い人ほど、人生に意味を感じる傾向があり、とくに「今の体験を価値あるものとして味わう感覚」が強く関連していました。庭園と駐車場で調査した研究でも、この側面を通じた間接的な関連が報告されています。
自然映像を使う実験は、自然を間接的に体験することの影響を検討したものです。ただし、調査研究は因果関係を証明するものではなく、実験も人生そのものが長期的に変わったことを示すものではありません。
私はここが特に面白いと思います。自然には、何かを「達成する」以外にも、今ここで生きている経験の価値に気づくという入口があるのかもしれません。これは研究に基づく解釈であり、日常のすべての場面に同じ効果があると保証するものではありません。
原著:Needyら(2026)Nature and the Experience of Meaning in Life
④ Aweと「自分らしく生きたい」――6研究1,115人
では、最初に登場したAweと「人生の意味」の接点は? Yuanら(2024年)は6研究・計1,115人を分析しました。
Aweと人生の意味との関係には、「自分らしく生きたい」と探求する気持ち(authentic-self pursuit)が関わる可能性が示されました。Aweの直接的な効果は一様ではなく、もともと自分らしさを強く感じているかどうかによっても結果が異なります。
重要なのは、この研究は大木の実験や2026年の自然研究とは別だということ。「自然を見上げると必ず人生の意味が高まる」という一本の因果関係が実証されたわけではありません。
原著:Yuanら(2024)How and When Awe Improves Meaning in Life
⑤ 自然は「人生の意味」のどんな入口になる?
PassmoreとKrause(2023年)は、自然と人生の意味に関する研究を整理し、自然とのつながりが一貫性・目的・存在の大切さ・体験を味わうことなどと関係する可能性を論じています。これは研究成果を統合して考えたレビュー・理論的考察であり、著者らが一つの実験で四つの効果を証明したわけではありません。
たとえば、季節が移り変わる景色を見て、今の自分の変化を考える。植物が花を咲かせる姿に、今大切にしたいことを重ねてみる。こうした見方はAromaTimeからの日常への提案です。個々のたとえの効果を、原著が直接検証したものではありません。
原著:Passmore & Krause(2023)The Beyond-Human Natural World: Providing Meaning and Making Meaning

「すごい!」という感動と、「今の時間が大切」という気持ちは、つながっているけれど同じではないんだね。

そうなんです^^ 別々の研究を並べることで、「自然が心に働きかける道筋」がいくつもあると分かってきます。
今日からできること|感動する・味わうを分けて楽しむ

Aweを見つけるなら
- 大きな木や空を、いつもより少し長く眺める
- 散歩中に「わあ、すごい!」と思ったものを一つ探す
人生の意味について考えるなら
- 今日の自然で、「よかった」「大切に感じた」と思う瞬間を一言残す
- その瞬間に「今の自分にとって何が大切?」と問いかけてみる
後半の二つは、研究の考え方を参考にした実践の提案です。実施すれば人生の意味が高まるという介入効果が直接確認されたものではありません。
まとめ|自然の感動と人生の意味、二つの研究の入口
Aweの研究では、大木を見上げた直後の援助行動や、感動に意識を向けた散歩中の感情などが調べられました。一方、人生の意味の研究では、自然とのつながりや、今の体験の価値を味わう感覚との関係が検討されています。
「自然はすごい!」と感じることも、「この瞬間が大切」と味わうことも、身近な自然との違った関わり方。 二つの研究の流れを混同せず、これからも探っていきたいと思います。
みなさんは最近、自然のどんな景色に感動したり、大切な時間を感じたりしましたか?^^
関連する記事・原著
- 前回|疲れた日でもすぐできる!自然のチカラ3選
- Keltner & Haidt(2003)Aweの概念
- Piffら(2015)Aweと援助行動
- Sturmら(2022)Awe散歩
- Needyら(2026)自然と人生の意味
- Yuanら(2024)Aweと自分らしさ
- Passmore & Krause(2023)自然と人生の意味の考察
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<この記事を書いた人> 川口三枝子(AromaTime主宰)
NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。アロマ歴28年。著書『すぐ使えるアロマの化学』はロングセラーとなり、台湾語版も発売。AromaTimeスクールチームとして、緩和ケア病棟でのアロマケアボランティアも継続しています。
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