EUで精油名も表示対象に!香料アレルギーのニュースから考えたいこと

TINOが化粧品の成分表示を確認する、EUの精油名と香料アレルゲン表示を紹介するイラスト

ラベンダーやレモン、ローズ。

私たちにとって身近な精油の名前が、EUの化粧品で香料アレルゲンの個別表示対象に加わったことをご存じですか?

2026年7月、EUでは新しい表示ルールの移行期限を迎えました。

この記事では、EU規則2023/1545による香料アレルゲン表示の変更と、精油を使うときに知っておきたい皮膚感作について整理します。

TINO
TINO

天然の精油なのに、アレルゲンとして表示されるの?

そんなふうに驚く方もいらっしゃるかもしれません。

でも、これは精油の使用を禁止するためではなく、香料アレルギーのある人が製品を選びやすくするための制度です。

このニュースを読んで、私はセラピストになった頃の友人のことを思い出しました。

今日は、好きな精油をこれからも長く楽しむために、皮膚感作について考えてみたいと思います。

EUで精油名も表示対象に。何が変わったの?

EUでは2023年7月、規則(EU)2023/1545が制定され、56種類の香料アレルゲンに関する表示対象が追加されました。

対象には、ラベンダー、レモン果皮、ペパーミント、ローズなどの精油・植物抽出物の表示名も含まれています。

リナロール、リモネン、ケイ皮アルデヒド(表示名:Cinnamal)などの芳香成分は、従来から個別表示制度の対象です。今回新たに加わった精油・植物抽出物の表示名と、区別して考えたいところです。

対象物質の最終製品中の濃度が、洗い流さない化粧品では0.001%、洗い流す化粧品では0.01%を超えると、個別表示が必要になります。

新規にEU市場へ投入する製品の移行期限は、2026年7月31日でした。旧要件を満たして期限内に市場投入された製品には、2028年7月31日まで販売などを続けられる経過措置があります。

これはEUの化粧品に関する規則で、日本の制度が同時に変更されたわけではありません。

表示基準の濃度は、精油を肌に使うときの安全な配合濃度ではありません。

EUの化粧品の香料アレルゲン表示。洗い流さない製品は0.001%超、洗い流す製品は0.01%超が個別表示の基準
精油・植物抽出物の表示名が追加されたことを示す概念図です。リナロールなど一部の香料成分は従来から個別表示の対象でした。図の英語名は例で、製品の正式な表示名は規則を確認します。

なぜ香料アレルゲンの表示が増えたのでしょう?

背景には、長年にわたる香料アレルギーの研究があります。

2012年、EUの消費者安全科学委員会(SCCS)は、香料による接触アレルギーについて科学的な評価を行いました。

その知見が、今回の制度の拡大につながっています。

ここで知っておきたいのが「皮膚感作」です。

一度感作されると、少量でも反応することがある

皮膚感作とは、ある物質に接触したことで、免疫系がその物質に対してアレルギー反応を起こしやすい状態になることです。

一度感作されると、その後は少量の接触でも、赤み、かゆみ、湿疹などが起きる場合があります。

また、皮膚への刺激によって生じる炎症と、免疫反応によるアレルギー性接触皮膚炎は区別して考える必要があります。

TINOと学ぶ皮膚感作。原因物質への接触で感作され、その後少量でも症状が出ることがある。刺激による炎症と、特定の物質への免疫反応による炎症を区別する図
アレルギー性接触皮膚炎につながる感作の流れを簡略化した模式図です。すべての人に起こるわけではありません。刺激性とアレルギー性は、症状が出る早さだけでは区別できません。

シナモン・カッシアを使えなくなった友人のこと

私がアロマセラピストになった頃、シナモン・カッシア精油をよく使う友人がいました。

ダイエットに関するアロマケアが得意な方でした。

ところが、後にアレルギー反応が出て、シナモン・カッシアを使えなくなってしまったと聞きました。

この経験は、今でも私の印象に残っています。

ケイ皮アルデヒドは、なぜ皮膚感作性が強いのでしょう?

シナモン・カッシア精油には、芳香族アルデヒド類のケイ皮アルデヒド(シンナムアルデヒド)が多く含まれています。

ケイ皮アルデヒドは、シナモンらしい温かみのある香りに関わる成分です。

一方で、皮膚刺激性と皮膚感作性の両方が知られています。

ケイ皮アルデヒドは、化学構造上、皮膚のタンパク質と反応して結合する性質があります。このような反応が、免疫系による認識や皮膚感作のきっかけになると考えられています。

日本のNITEによるGHS分類では、

  • 皮膚刺激性:区分2
  • 皮膚感作性:区分1A(強い感作性)

と評価されています。

つまり、ケイ皮アルデヒドは、化学的にも皮膚感作性が強く、特に注意したい芳香成分の一つなのです。

アロマ・アドバイザー講座でも大切にしていること

私のNARDアロマ・アドバイザー講座でも、ケイ皮アルデヒドを含む芳香成分の特徴や、皮膚刺激性・皮膚感作性について詳しくお伝えしています。

精油は「何に役立つのか」だけでなく、「どのような化学的性質を持ち、なぜ注意が必要なのか」を理解することも大切だからです。

友人のアレルギーの原因成分を検査で確認したわけではありませんが、この経験は、精油の安全性を学ぶ重要性を考えるきっかけになりました。

好きな精油を長く楽しむために

原液や高濃度を避け、酸化に注意し、肌に異常が出たら使用を中止する精油の安全な使い方

天然の精油だからといって、肌にどのような使い方をしても安全というわけではありません。

特に、次のことを大切にしたいですね。

原液や高濃度で使わない

精油は濃ければ濃いほどよい、というものではありません。

成分によって皮膚刺激性や感作性が異なるため、それぞれの使用上の注意を確認する必要があります。

繰り返しの使用にも気を配る

同じ精油を毎日繰り返し肌につける場合には、濃度だけでなく、使用頻度や接触する皮膚の状態にも注意したいものです。

精油の酸化にも注意する

リモネンやリナロールなどは、酸化によって皮膚感作性のある生成物を生じることがあります。

開封日や保管状態を確認することも、安全に使い続けるための大切な習慣です。

関連記事:その精油、いつ開けた?酸化と使用期限から考える安全な保管方法

肌に異常が出たら使用を中止する

かゆみ、赤み、湿疹などが現れた場合には、無理に使い続けないことが大切です。

症状が続く場合は皮膚科に相談し、必要に応じて原因を調べてもらいましょう。

ニュースをきっかけに考えたいこと

今回のEUの表示制度は、精油を使うことを否定するものではありません。

香料アレルギーのある人が、原因となる物質を避けて製品を選びやすくするための取り組みです。

そして、私たちアロマテラピーを楽しむ側にも、大切なことを思い出させてくれます。

川口三枝子
川口三枝子

好きな香りだからこそ、これからも長く楽しみたい。

だからこそ、天然という言葉だけで安心せず、精油の化学成分と体の反応を理解しながら使っていきたいですね。

今回のニュースが、普段の精油の使い方を振り返るきっかけになれば嬉しいです^^

よくある質問

EUでは精油が使えなくなるのですか?

この表示ルールは、精油全般の使用を禁止するものではありません。対象の香料アレルゲンが基準濃度を超える化粧品について、成分名の個別表示を求める制度です。

日本の化粧品表示も同時に変わったのですか?

いいえ。この記事で紹介しているのはEUの規則です。日本の表示制度が同時に変更されたという意味ではありません。

参考資料

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<この記事を書いた人> 川口三枝子(AromaTime主宰)


NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。アロマ歴28年。著書『すぐ使えるアロマの化学』はロングセラーとなり、台湾語版も発売。AromaTimeスクールチームとして、緩和ケア病棟でのアロマケアボランティアも継続しています。


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