看護×アロマとは?看護師が知っておきたい基礎知識と安全な学び方

植物の「生きる力」を精油の化学成分を通して、効果的に、そして安全に使うための精油の選び方をお伝えしています。NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー、アロマセラピスト・トレーナーのAromaTime川口三枝子です。

患者さんの不安な表情や、つらそうな様子を目の前にして、「看護や治療とは別に、私にも何かできることはないだろうか」と感じた経験はありませんか?

アロマに興味を持っても、いざ医療や介護の現場で考えようとすると、「どこまでしてよいの?」「精油を安全に選べるだろうか」「根拠を聞かれたら、きちんと説明できるだろうか」と迷う方も多いと思います。

この記事では、看護とアロマの間にどのような接点があるのか、医療との線引き、そして安全に学ぶために知っておきたいことを、緩和ケア病棟での実体験とともにお伝えします。

看護×アロマとは?医療に代わるものではありません

看護×アロマというと、「精油で患者さんの症状を治すこと」を想像されるかもしれません。

けれど、アロマは医療や治療に代わるものではありません。病気を診断したり、精油で症状が治るとお伝えしたりするものでもありません。

私が緩和ケア病棟で行っているのは、香りとタッチングを通して、患者さんにゆっくり過ごしていただくためのリラクゼーションです。

香りを使うことだけが目的ではありません。相手の表情や言葉、手の温度などを感じながら、その方が今、何を望んでいるのかを丁寧に見る時間でもあります。

「治す」のではなく、リラクゼーションとして伝える

緩和ケア病棟でのアロマボランティアでは、特に男性の患者さんから、「これを受けたら痛みが取れるの?」「良くなるの?」「リハビリとはどう違うの?」と確認されることがあります。

そのようなとき、私は「これで痛みが治りますよ」とは絶対に言いません。

「これは痛みを治療するものではなく、香りや手のぬくもりを感じながら、リラックスして過ごしていただくための時間です」とお伝えします。

それでも「受けてみようかな」と思われる方には、体調や香りの好みを確認しながら、丁寧に触れさせていただきます。「痛みが取れないなら受けない」とおっしゃる方には、無理におすすめしません。

何ができて、何ができないのかを正直にお伝えすること。受けないという選択も尊重すること。それが、安全にアロマと関わるための大切な線引きだと思っています。

緩和ケアの現場で、患者さんから教えていただいたこと

先日、緩和ケア病棟で「指がとても痛い」とおっしゃる患者さんがいらっしゃいました。

最初は、手の甲と指の部分を、香りのするオイルでやさしく触れさせていただきました。その後、腕時計を外していただき、手首から肘の少し下までケアする範囲を広げていきました。

ケアを続けるうちに、患者さんの表情が少しやわらいだように見えました。ただ、それが香りによるものなのか、触れられたことによるものなのかは分かりません。

すると、患者さんがご自身の昔のお祭りについて、楽しそうに話し始めてくださったんです。

指が痛いとおっしゃっていたのに、ご自分でスマートフォンを取り出し、スイスイとスクロールしながら、昔のお祭りの写真をたくさん見せてくださいました。

「気持ちよかった」とか「痛みが楽になった」という言葉は、一言もありませんでした。

それでも、写真を見せながら楽しそうにお話しされる姿を見て、言葉で語られることだけがすべてではないのだと感じました。

医療や治療とは異なるところで、患者さんの人生や、その方らしさに触れられる時間がある。私はこの経験から、アロマやタッチングには、香りや手技だけではないコミュニケーションの側面があると感じています。

緩和ケア病棟での活動については、「5年ぶりの緩和ケア病棟アロマ施術」でもご紹介しています。看護師さんによる訪問アロマについては、「訪問アロマケアという選択肢」もあわせてご覧ください。

緩和ケア病棟で患者さんの手にやさしく触れるアロマボランティアの様子
緩和ケア病棟でのアロマボランティア活動の様子
※本文の患者さんとは別の活動時に撮影した写真です

看護師が知っておきたい精油の安全性

精油は、植物の芳香成分が凝縮されたものです。自然のものだから、どのように使っても安全というわけではありません。

患者さんに使う前に、少なくとも次のことを確認する必要があります。

  • 精油を原液のまま皮膚に使わず、目的に合った濃度に希釈すること
  • 使用方法と使用量を確認すること
  • 年齢、体調、持病、服薬、皮膚の状態などに配慮すること
  • 香りを好まない方や、不快に感じる方がいることを忘れないこと
  • 使う場所の方針や、関係する医療者との確認を大切にすること
  • 違和感や皮膚の異常などがあれば、すぐに使用を中止すること
  • 精油の飲用は扱わないこと

看護師として人の身体を学んできたことと、精油を安全に扱えることは別です。

看護の知識があるからこそ、精油についても「何となく良さそう」で終わらせず、安全性まで学んでほしいと思っています。

アロマの化学を「身近な物語」に翻訳して伝える意味

精油を学ぶというと、難しい化学成分の名前を覚えることを想像する方も多いと思います。

でも、最初から聞き慣れない成分名を並べても、アロマを初めて学ぶ方にはなかなか伝わりません。

例えばマンダリンなら、「こたつでほっこり、みかんを食べるような安心感」。ジンジャーなら、「お料理の薬味でもおなじみで、体がじんわり温まるイメージ」。

いきなり難しい成分名から始めるのではなく、まずは誰もが知っている身近な植物や食べ物に置き換えてお話しします。そうすると、アロマに関心がなかった方にも、精油をぐっと身近に感じてもらえるんですよね^^

そこから、「では、精油にはどのような成分が含まれているのか」「安全に使うには何を知る必要があるのか」と、少しずつ化学の学びにつなげていきます。

精油の化学は、その精油の特徴や安全性を考えるための大切な土台です。

それと同時に、植物の伝統的な使われ方、長く積み重ねられてきた経験、実際のケアでの観察、そして現在確認できる研究を、総合的に見ていくことも大切だと考えています。

AromaTimeでは、難解に思われがちな化学を丸暗記するのではなく、「植物が自然の中で生き抜くための物語」とつなげてお伝えしています。

看護×アロマを安全に学び始めるには

看護にアロマを生かしたいと思ったら、まずは患者さんに使うことからではなく、自分自身で香りを体験することから始めてみてください。

自分はその香りをどう感じるのか。時間がたつと香りはどのように変わるのか。濃度や使い方によって、感じ方はどう違うのか。

そのうえで、植物のこと、精油の成分、安全な濃度や使用方法を一つずつ学びます。

「この症状には、この精油」と答えだけを覚えるのではなく、患者さんの状態や希望、香りの好み、ケアを行う場所などを見ながら考えることが大切です。

看護師さんがすでに持っている観察やアセスメントの力は、アロマケアを安全に考えるときにも役立ちます。

アロマは医療に代わるものではありません。
それでも、香りやタッチングを通して、その方が少しゆっくり過ごせる時間を考えることはできます。

この記事が、看護とアロマの関係を安全に考える最初の一歩になればうれしいです。

看護×アロマについてのよくある質問

看護師なら、患者さんに精油を使ってもよいですか?

看護師であることだけで、精油を自由に使えるわけではありません。精油の安全性を学び、相手の体調や意思、使用する場所の方針などを確認する必要があります。アロマは医療行為に代わるものではなく、効果を約束するものでもありません。

アロマは痛みや不眠の治療に使えますか?

精油で痛みや不眠が治るとお伝えすることはできません。医療による診断や治療を優先したうえで、香りやタッチングによるリラクゼーションを考えます。

看護師が最初に学ぶべきことは何ですか?

精油の基本的な性質、使用方法、濃度、禁忌、安全性です。そのうえで植物と成分を学ぶと、「なぜその精油を選ぶのか」を自分で考えられるようになります。


この記事を書いた人:川口三枝子
NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピスト・トレーナー。AromaTime主宰。植物がどのように生きているかと精油の化学成分をつなげ、精油を丸暗記ではなく「理由」から選べる学びを伝えています。

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<この記事を書いた人> 川口三枝子(AromaTime主宰)


NARD JAPAN認定アロマ・トレーナー/アロマセラピストトレーナー。アロマ歴28年。著書『すぐ使えるアロマの化学』はロングセラーとなり、台湾語版も発売。AromaTimeスクールチームとして、緩和ケア病棟でのアロマケアボランティアも継続しています。


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